令和7年5月に成立した改正労働安全衛生法により、高年齢労働者の労働災害防止措置が事業者の努力義務として新たに法律に位置づけられました(第62条の2)。令和8年4月1日から施行されており、あわせて厚生労働大臣による「高年齢者の労働災害防止のための指針」も同日より適用されています。
労働災害による休業4日以上の死傷者数に占める60歳以上の割合は、令和6年時点で30.0%に達しており、増加傾向が続いています。高年齢者の就労が一層進むと予測される中、高年齢者が安心して安全に働ける職場環境の実現が求められています。
従来から「エイジフレンドリーガイドライン」(令和2年策定)により自主的な取り組みが促されていましたが、今回の改正でこれが法律上の努力義務として明確に位置づけられました。
今回の改正で新設された第62条の2により、事業者は高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善・作業管理その他の必要な措置を講ずるよう努めることが義務づけられました。業種・規模を問わず、すべての事業者が対象です。あわせて、厚生労働大臣がその適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を公表することとされました。
指針では、事業者が取り組むべき事項として以下の5つが定められています。
- 安全衛生管理体制の確立等(経営トップによる方針表明、リスクアセスメントの実施)
- 職場環境の改善(身体機能の低下を補う設備導入、高年齢者の特性を考慮した作業管理)
- 高年齢者の健康や体力の状況の把握(健康診断の実施、体力チェックの継続的実施)
- 高年齢者の健康や体力の状況に応じた対応(就業上の措置、適合する業務とのマッチング)
- 安全衛生教育(高年齢者本人への教育、管理監督者への教育)
指針では、筋力、バランス能力、敏捷性、全身持久力、感覚機能および認知機能の低下等の高年齢者の特性を踏まえ、以下の労働災害への対策が具体的に示されています。指針は「危険に感じられない場所で転倒災害が発生していることも多い」と指摘しており、「軽作業や危険と認識されていない作業であっても、災害に至る可能性がある」としています。
- 転倒(筋力・バランス能力・敏捷性の低下)
- 墜落・転落(敏捷性の低下)
- 腰痛(筋力低下・姿勢維持能力の低下)
- 熱中症(暑さや水分不足に対する感覚機能・体温調節機能の低下)
指針は「各事業場における高年齢者の就労状況や業務の内容等の実情に応じて、実施可能な高年齢者労働災害防止対策に積極的に取り組むことが必要である」としており、5項目すべてを一度に取り組むことを求めているわけではありません。まずは自社の高年齢労働者の割合や作業内容を把握し、リスクの高いものから優先順位をつけて取り組むことが現実的です。
また、指針では中小企業事業者を対象とした「エイジフレンドリー補助金」の活用も紹介されています。職場環境の改善や専門家による指導を受けるための経費の一部が補助される制度です。対応を検討する際にあわせてご確認ください。
※本記事は執筆時点の法令に基づいています。今後の改正等により内容が変更される場合があります。

