令和8年12月から、確定拠出年金(DC)の掛金の上限(拠出限度額)が引き上げられます。あわせて、従業員が自ら掛金を上乗せするマッチング拠出のルールも大きく変わりました。企業型DCを実施している事業主の方や、iDeCoプラスの導入を検討している中小企業の事業主の方に向けて、制度の基本からポイントを整理します。
確定拠出年金は、公的年金(国民年金・厚生年金)に上乗せする私的年金の一つです。毎月の掛金を積み立てて加入者自身が運用し、その運用結果によって将来の受取額が決まります。受取額があらかじめ決まっている「確定給付企業年金(DB)」とは、この点が異なります。確定拠出年金には、主に次の3つの形があります。
- 【企業型DC】会社が掛金を拠出し、従業員が自ら運用する企業年金。規約に定めれば、従業員本人も掛金を上乗せできる(マッチング拠出)
- 【iDeCo(個人型)】個人が任意で加入し、自分で掛金を拠出する制度。掛金は全額が所得控除の対象
- 【iDeCoプラス】企業年金を実施していない従業員300人以下の中小企業が、従業員のiDeCoに事業主として掛金を上乗せできる制度
今回の改正を理解するうえで押さえておきたいのは、会社員が確定拠出年金に拠出できる掛金は、企業型DCとiDeCoの掛金に、DBなど他の企業年金の掛金相当額も含めた「ひとつの枠」で考えるという点です。令和8年12月からは、この枠が月6.2万円になります(DB自体の掛金には上限はありませんが、DBの掛金相当額が大きいほど、確定拠出年金に使える枠は小さくなります)。
企業型DCの拠出限度額が月5.5万円から6.2万円に引き上げられます。DBなどの他の企業年金をあわせて実施している場合は、6.2万円から他制度の掛金相当額を差し引いた額が上限です。
また、企業型DCの加入者がiDeCoを併用する場合のiDeCo掛金の上限(月2万円)もなくなり、6.2万円から事業主の拠出額(企業型DCの事業主掛金とDB等の他制度掛金相当額の合計)を差し引いた額までとなります。
これまでマッチング拠出には、従業員本人の掛金が事業主の掛金を超えてはならないという制限がありました。この制限は令和8年4月1日にすでに撤廃されており、12月の拠出限度額の引き上げとあわせて、従業員はより多くの額を上乗せできるようになります。なお、マッチング拠出は企業型DCの規約に定めがある場合にのみ利用できます。
なお、マッチング拠出を利用している従業員はiDeCoを併用できない点は変わりません。企業型DCの加入者が自ら掛金を上乗せする場合は、「マッチング拠出」か「iDeCo」のどちらかを選ぶことになります。
- 拠出限度額の引き上げに合わせて掛金を見直す場合、企業型DCの規約変更が必要となる場合がある
- DBなど他の制度を併用している場合は、従業員がiDeCoの掛金上限を判断できるよう、他制度掛金相当額を周知する必要がある
- マッチング拠出の上限やiDeCo併用時の上限が変わるため、従業員から問い合わせを受ける可能性がある。変更内容を把握しておく
企業年金を実施していない中小企業にとって、従業員の老後の資産形成を支援する手段となるのがiDeCoプラスです。事業主掛金は損金算入でき、従業員の掛金は所得控除の対象となります。令和8年12月から、次の2点が大きく変わります。
- 【拠出限度額の引き上げ】月2.3万円(加入者掛金と事業主掛金の合計)→月6.2万円に大幅引き上げ。加入者掛金・事業主掛金それぞれ1,000円以上61,000円以内での設定が可能に
- 【加入可能年齢の延長】65歳(国民年金資格喪失時)まで→70歳になるまで掛金の拠出が可能に。本人が継続加入の届出を提出し、事業主が国民年金基金連合会に対象者追加届を提出することが必要
令和8年12月分の掛金(令和9年1月引き落とし分)から、企業年金のない会社の従業員がiDeCoに拠出できる上限は月2.3万円から6.2万円に引き上げられます。また、これまでiDeCoは国民年金の被保険者でなければ加入できませんでしたが、改正後は一定の要件を満たせば、年齢到達や退職によって国民年金の資格を失った後も、70歳になるまで掛金を拠出できるようになります(老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給した方は対象外)。従業員から質問を受けた際の参考にしてください。
今回の改正により、企業型DCやiDeCoプラスを通じて、より手厚く従業員の老後の資産形成を支援できるようになります。福利厚生の充実は、人材の確保・定着にもつながります。制度の導入や改正への対応についてお困りの際は、お気軽にご相談ください。
※本記事は執筆時点の法令・公表資料に基づいています。今後の改正等により内容が変更される場合があります。
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